僕たちの時間(とき)
 当然ながら、睦月には信じられなかった。

 信じようともしなかった。

 だが、いつになく真剣な満月の態度に、やっと事実を飲み込んだ。

 涙目になりつつ、睦月は尋ねた。

「聡さんは……?」

「知ってるわ、たぶん。――だけど……聡くんは“だめ”なの……」

「どういうこと……?」

「みぃは……きっと聡くんと、別れたんだと思う……」

「どうして!? 何で……!!」

「わかんない……でもあの子のことだから、聡くんに迷惑をかけたくないとでも考えたんでしょうね、きっと……」

「だとしてもそんな一方的なの、聡さんが納得するはずないっ!!」

「でも、そうだとしたら……あんなに早く帰ってしまったりは、しないでしょうね。わたしがみぃの所へ戻った時には、もういなかった。昨日も今日も、ずっと来なかった。納得してないんだったら、ずっと傍にいると思う。

 ――“いつもの聡くん”なら……どんなに拒まれたって、みぃの傍に、いるわよ……!」

「そんな…そんなことって……! それじゃ、みぃちゃんが……!」

 泣き出しそうな睦月の肩に手をのせ、

「むぅ。泣かないで、よく聞いて」

 満月はそう静かに語りかけ、じっと睦月を見つめた。

「傷ついてるのはみぃだけじゃない。聡くんだって、同じくらい…ううん、それ以上に傷ついてる。それをわかってあげて欲しいの……」

「まぁちゃん……」

「聡くんには、そうならざるを得ない理由(わけ)があるから……」

「理由(わけ))……?」

「聡くんには“傷”があるから……まだ癒えていない、過去の傷が……だからきっと、しばらくは現実を受け入れられないと思う。けど光流もわたしも、聡くんを信じてるから。むぅも、信じて待っていて欲しい。2人を見守っていてあげて欲しいの」
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