僕たちの時間(とき)
「無理しないでよ。無理して笑わないで。そんなみぃちゃん見てるの、やだ!」

「睦月……聞いたのね、私の病気(こと)……」

「聞いたよっ!!」

「なら、心配しないで。仕方が無いことなんだから。私は平気。だから睦月にそんなカオされると、困っちゃうわ」

「ち、がうっ…! 違う違う、違うのっっ!!」

 再び、ブンブンと首を振る。

「病気のことなんて心配しないよ! みぃちゃんが強いの、よくわかってるもん! そんなの心配したらみぃちゃんに迷惑だってことも、わかってるもん! だから違うの!」

 我ながら酷いことを言っていると、睦月は思う。

 当の病人を前にして、心配していないだなんて、よく言えたものだ。

 でも言わなきゃ気が済まない、言わなきゃ水月に伝わらない……!!

「あたしが心配してるのは、聡さんのことなのっ!!」

「睦月……」

「みぃちゃんは強くないよ! 聡さんについては、全っ然、強くない! なのにどうして強いフリして別れるの? 何で、好きなのに別れようとするのよっ!!」

「仕方ないの……」

「答えじゃないよ、そんなのっ!!」

「聡くんのためなのよ……聡くんが幸せになるには、この方がいいの……」

「なんでそうなの!? どうしてそうなるの!? 聡さんの幸せは、聡さんが選ぶものだよ!? なのにどうして、みぃちゃんは突き放すようなマネするの!? どうして傷つけるようなマネ、するのっ!?」

「私1人、傷つくだけなら……」

「そうじゃないっ!! どうして聡さんも傷つくってこと、考えないのっ!?」

「そんなことは……」

「無いハズ、ないでしょっ!? みぃちゃんが、聡さんの古傷えぐるようなマネしてるんじゃないの!!」

「―――…っ!? それ、どういう……!!」

「ほら、気になってる! みぃちゃん、やっぱり聡さんのことまだ好きなんじゃない!! 好きなら好きだって、聡さんのとこに戻んなよ!! そうじゃないと、どういうワケかなんて教えないもんっ……!!」


 ――パシッ……!


 小気味いい音が響き、ハッと睦月は自分の頬に手を当てる。

 水月は頬を紅潮させ、涙をためた瞳でキッと睨み付けるように、睦月のことを見つめていた。
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