HH
「地毛なんですよ」とごまかす人が絶対いると思ったし、実際いた。けど、その嘘を突き通すために、髪が伸びて黒くなったところをまた染めるなんて努力は、たぶん私にはできない。第一、そんなにお金ないし。

化粧も、……あんまり。雑誌を見ていろいろ考えてはいたけど……同じ高校に行った先輩に、「一年の時からやってると、目ぇつけられるよ」と教えられて、それから気が萎えた。

そういえば中学でも、ちょっとグロスつけた子がいただけで叩かれてたっけ。みんな自分が我慢してるから、ほかの子が抜け駆けするのが許せないらしい。

それに考えてもみると、私は目の回りを真っ黒くしたいわけでもないし、まばたきするたびに音がしそうなマスカラにも、そこまで興味はなかった。するなら、ナチュラルメイクかな。

それで結局、高校に入ってイメチェンをするという計画は、わりとなあなあのうちに私の中で消滅してしまって、今になる。

髪は黒。言うまでもなく地毛。化粧というほどの化粧はしてないけど、まあ、まゆは整えた。あと、リップくらい。

そんだけ。ちょっと、……うん、ちょっと物足りない感じ。でも仕方がない。高校生になったからって、私が急にレベルアップしたわけじゃないから。

でも、私にだって意地はある。

「高校生になったらこれがしたい」っていう、期待とか、希望とか、夢とか、そういうのを捨てたわけじゃない。

ただちょっと、その足がかりとしてのイメチェンが最初で、ほんとちょっとだけ、思ったほど目立ってはできなかっただけ。
< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop