雪の雫に濡れた夜

 *

ー1年半前ー

 慎が自分の店に斗哉を呼び、
 それから、よく《スピカ》に来てくれた。

 長身で、黒髪に端整な顔立ちは、店でも目を引いた。

 最初はそれだけ、


 いつからだろう…

 舞台に上がると、私は斗哉の姿を探す様になった。


 1年前の寒い夜、
 いつもの様に歌い終わった後、慎と斗哉が話しているのを、
 私は 遠くから、眺めていた。


 そして、

「シュイ、雪が降ってきた。ドレスの上に何か羽織れ、風邪引くぞ」

 斗哉を見送って、外から帰ってきた慎が、そう言った。

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