雪の雫に濡れた夜

「雪?慎、斗哉さんに傘は?」
 
 瑠璃色のストールを羽織りながら、尋ねる。

「いらないって、結構降ってたんだけど、…まぁあいつなら、大丈夫だろ」

 窓の外を見ると、白く、雪の世界に覆われていた。

「慎、傘貸して」

「あっ、おい!シュイ!そんな格好で、どこ行く!」


 背中に向けられた慎の声も、
 ひるがえり雪に濡れるドレスも、


 気にしないで、走った。

 右手に黒い店の傘を持って、左手でストールをおさえながら、
 ヒールの靴は走りにくくて、何度も転びそうになったけど、


 それでも、


「斗哉さん!待って、待って下さい」

 私の声に、黒髪が濡れた彼が振り返った。

 驚いて、
 不思議そうに私を見る。

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