雪の雫に濡れた夜

「あの、よかったら、傘、使って下さい。このまま帰ったら、風邪ひきます」

「…それより、君の格好の方が風邪ひきそうだけど、」


 白いドレスに瑠璃色のストール、
 白いヒールの靴も雪に濡れていた。

「君の傘は?」
「あっ!…急いできたから、傘一つしか持ってこなかった…」

 慌てる私の様子を見て、

 ふ、と斗哉が笑った。

「…それじゃあ、《スピカ》まで、一緒に行ってくれるか?」

「え?」

「雪がやむまで、君の歌を聴かせてくれるか?」


 真っすぐに私を見る、斗哉の黒い瞳。


「曲が終わったら、オレの話し相手になって欲しい」


 傘を持つ私の冷えた手を、斗哉の大きな掌が包んでくれた。
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