紅い煙草と鉱石人形
硝子が割れるような音、大きな物音が屋敷内に響き渡った。


(ー何だ!?)


物音と共に複数の殺気を感じ、紫苑は身構える。


後ろ腰にあるシシリー社製の銃に手をかけ、鋭く感覚を澄ます。

 
 音、匂い、振動、視野を広げ、少しの異変も逃さぬ様にー

 屋敷内の殺気を読み取る。

(客は今のとこ一人―か。…あとは面倒なのがもう一人)



「今頃何の用だ、露花」

紫苑は、身構えたまま背後に近づいて来る、よく知る気配に声をかけた。


「ヤバいわよッ、紫苑!」

とにかく近道を抜けてこの部屋まで来たのだろう。

頭や濃紺の外套にたくさんの枯葉をつけたまま、露花は難なく二階の露台(テラス)の柵をひょいと飛び越え、座り込んだ。



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