紅い煙草と鉱石人形
「もう少しで、誰も傷つかず、血が流れずに事が済んだのにッ、一体何を考えてこんな…」


疑問は幾つも増えるばかりだったが、


「話は後だ、露花。外に車廻せ、オレは橘とサクラを連れて行く」

サクラを抱え蹲る橘に駆け寄り、紫苑は露花に指示を出す。


「分かったわ。その娘だけでも私が連れて行った方が、」

「―いや、この様子じゃ離さないだろ、今なら二人連れてオレ一人でも行ける。お前は車を」


紫苑の言葉に、了解、と手を振り、露花は元来た露台を軽々と飛び降り、樹々の中、姿を消した。



紫苑はサクラ抱える橘を立ち上がらせようとした、が、

「離せ、触るな。サクラは…サクラはどこにも渡さない、」

「いい加減にしろ、ここにいたら皆、[白い闇]の奴に殺(ヤ)られるだけだ。お前も、サクラもー」





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