紅い煙草と鉱石人形

氷の刃


「ヘンタイめ」

セイの様子を、窓の隙間から覗き、紫苑は嫌そうに吐く。


「橘っ、しっかりしろ、このままじゃサクラが離れるどころか、殺されるぞ」


苛立たしげに言った自分の言葉に、紫苑はハッとした。

鉱石人形だというのに、〝壊〟ではなく、〝殺〟とー


(どうかしてる…)

 
サクラの〝綺麗な人間らしさ〟に、心奪われたか、焦る気持ちからか、自分でもよく解らない感情が心ザワついていたのは確かだった。


 少しの時間、紫苑の橘を掴む手が緩むと、橘は、その紫苑の腕にサクラを預け、離れた。


「―?おい、橘…」


サクラ抱えた紫苑が、橘を追おうとすると、橘はそれを遮るように、窓辺に吹き飛んでいた桜柄のベッドカバーを拾い、差し出した。


「掛けてやってくれ。危なくない様に、寒くない様に」

「橘!?」

「パパ…?」


訳が分からない紫苑とサクラ、橘の眼はいつの間にか優しくサクラを見つめ、その表情は穏やかだった。



「行け」




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