紅い煙草と鉱石人形
終章
自由の行方
「こっちよ」
露花の声とともに腕を掴まれ、紫苑とサクラは屋敷の敷地を出た。
「早く行きなさい」
碧い硝子玉のついた車の鍵を紫苑に投げ渡すと、露花はサクラの頭を優しく撫で、公安の集まる屋敷内へ駆け出した。
鍵を受け取った紫苑は、車のエンジンをかけ、サクラを助手席に座らせる。
サクラは抱えられていた時のまま、躯を丸める様に蹲り、声を殺して泣いていた。
「…サクラ、どこに行きたい、望む所に連れて行ってやる」
運転席に座り、あえてサクラに視線を向けず、紫苑は問う。
「サクラ」
答えのない名を呼び、返事を促す。
「……行きたいトコロなんてない、…パパは、どこにもいくな、って、言っていた。ずっと…」
小さな声が、涙とともに零れる。