2人で
「あいつって・・ゆい?」

聞き間違えではなかったことを信じて、竜司に尋ねた。

「・・お前なぁ。この流れで他の奴だったらおかしいだろ。ちなみに、幼なじみとして好きって訳じゃないから」

竜司は呆れたように言う。

「え・・。・・何で・・?」

動揺してしまって、上手く言葉が出てこない。

「ゆいが俺の家に殴り込みに来た時にな、拓哉の噂で誤解してたらしいから、俺が正しておいてやったんだ」

「・・助かった。ありがとうな」


「当然だろ。そんで俺のお陰で誤解は解けた。
で、拓哉に彼女が出来た噂の方は本当らしいって言ってやったよ」

「なっ!!?」

さらりと言う竜司を殴ってやりたい。
せっかく誤解を解けたのに、これじゃ意味がないだろ。

文句を言ってやりたくて口を開く。

「お前、何考え」

「そしたらあいつ、すっごい傷付いた顔してた」


「ゆい・・傷付いたのか?」

一瞬ドキっとした。

ゆいが傷付いたと聞いて、嬉しかったのだ。

「あぁ。可哀想にな。
それからずっと元気ないらしいし、お前のせいだぞ」
それにしても竜司はこれを言いたくて、ニヤニヤしてたのだろうか?

「そう言いながらお前、さっきからずっと笑ってんだろ。・・ゆいのこと気になってたんじゃないのかよ?」


「なってない。友達の好きな女を取る気にはならねぇよ」

「・・じゃあ、何で嘘吐いたんだ?」


「お前のためだよ」

「俺の?」


「前々からお前らがお互い好き同士なのは気付いてた。でも新しい関係に踏み込めない、へたれで根性なしなお前の心に火を着けてやろうとライバルキャラを演じてやったんだぜ?」


「・・そうか」

竜司の意外な思いやりで、不覚にも感動してしまった。
へたれで根性なしなのは重々承知なので気にしない。
< 16 / 26 >

この作品をシェア

pagetop