世界はミューズ
次の朝、目は覚めていたのに母の呼び掛けをわざと無視することにした。
気分も体も重い。

「いい加減にしなさいよ」

いつものことなので母も諦めていて、揺り動かそうともしてくれない。
小学生の頃みたいに無理矢理ベッドから引っ張りだしてくれれば行けるかもしれないとぼうっと考えながら息を殺す。
居間から母と父の会話が聞こえてきた。

「詩織はものにならなかった。学校にも満足に行けないなんてなぁ」
「そんなことよく言えるわね。自分の娘に。」
「まぁいい。まだ香織がいる」

ドキン

新しい杭が打ち込まれる。
香織は妹だ。
私の方が中学の成績はずっとよかっただけに落胆が大きいのは言われなくてもわかっていたけど、言葉にされると嫌だった。

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