世界はミューズ
母がパートに出て行ったのを見計らってベッドから出た。
父も出掛けたらしく家は静まり返っていた。
働けよクソ親父。
父は三年前からずっと寝るかパチンコに行くかで生活している。
人のことを言える状態ではないくせに。
卒業するためにも学校に行かなくては、と思うが昨日何度も反芻した芸術。という言葉がのしかかってくる。
行けばそれを求められるのだった。むやみに足を踏み入れなければよかった。
そのおかげで気がつけばお先真っ暗だ。
普通が一番だった。
とにかく何かしようと母がたたんだ洗濯ものを片付け、部屋を掃除する。
あえて掃除機は使わず無心で箒で床を掃いていく。
ベランダからの日差しでフローリングが黄色く光っている。平日の午前中の居間は胸が痛くなる。子供の頃が懐かしいから。
美や個性を求められない作業は夢中でできる。
働き者の奥さんになれたら。などと中学生頃の自分が知ったら発狂するような気持ちが沸き起こってくる。