世界はミューズ
そんな風に考える人間は芸術家になんてなれない。出て行け。と言われるのが怖かったのだ。
そんな特別なものになろうなんて微塵も思っていないくせに。

「このままじゃ、河野。お前に門を開く場所なんてないぞ」

ドキン
心に杭を打ち込むような言葉に思わず涙が出そうになる。
門を開く学校なんて、という意味なのだ。
しかし、他のことでも同じことなのだった。
門を開いてくれる友人も恋人もない。
求めてもらえない。

「誰からも。」頭の中で唱える。

不良生徒のくせにいじめられっ子のように内気なのだから私は本当にどうしようもない。
< 5 / 19 >

この作品をシェア

pagetop