世界はミューズ
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卒業製作の私の背よりずっと巨大なキャンバスは、何度描いても気に入らなくて生乾きの油絵の具を無理矢理剥がしては上から塗り重ねるのを繰り返していた。
大きなキャンバスはその分値段も高額で簡単には新しく貼り直せないから、これに描くしかないのに、ボロボロのキャンバスは絵の具が上手く乗らない。
ボコボコの表面のマチエル(絵肌)に何を描いたらいいのかさっぱりわからなくなってしまっていた。
殆どの生徒が美大の受験対策をしている季節なのに、私の進行具合は正に絶望的だった。
(あーあ…拓んとこ行こ…)