世界はミューズ
油絵のアトリエを出てデザインコースのアトリエに行くと、拓が絵筆を握ってペタペタと絵の具を溶いていた。

「おー。なによ。真面目じゃん。拓ちゃーん」

んー。と拓が返事をした。
見ると、プルシャンブルーのような深い青を溶いている。拓らしい色だ。拓は青が好きだった。

「やっぱり好きだから」

拓が画用紙を水貼りしたパネルに向かって言った。
この人もそうなのか、と私は悲しくなる。
高校生とはいえ美術科の学生なのだから当たり前の筈なのに。

サボりがかっこいいと思ったことはなかったが、いけないことだと言われてもピンと来ない自分は子供だ。
未だにピンと来ない。
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