二人の秘密
不思議だった。
涼ちゃんと別れて辛くて堪らないはずなのに。
少し胸が痛むだけ。
少し涙が滲むだけ。
そんな自分に少しショックを受ける自分がいた。
でも、昨日龍君の胸で流した涙が全て流してくれていたのも本当だった。
忘れたいのか、忘れたくないのか、自分でも分からなくなっていた。
私はぐちゃぐちゃになった自分から目を背けるように支度をした。
いつものように朝ごはんを食べて、いつものように歯磨きをして、いつものように家を出て。
でも心はぐちゃぐちゃ。貴方がいた場所だけ空っぽ。
貴方と過ごした時間だけが止まったまま。
湊を失ったあの時の私と全く一緒だった。
電車に揺られながら、私は静かにばれないように泣いた。
朝早い電車の中には私の鼻を啜る音だけが虚しく聞こえていた。
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