二人の秘密
「龍君………」
急な雨にかばんで頭を隠しながら、走ってくる龍君が見えた。
近くまで来てやっと私の存在に気がついた龍君は、目を見開いた。
「山下………」
そんな切ない顔をさせてるのは私だよね。
もうさせないから。
「龍君…………話しが……あるんだ……」
「うん…………」
全てを理解したように、真剣な表情になった龍君は。
何故だかとても悲しく見えた。
「私ね、先生にフラれちゃったけど。
好きなの。大好きなの。」
目を見て。
しっかり。
貴方に伝わりますように。
「だから。
龍君の気持ちには、応えられない」
「…………山下が傷つく事になってもいいの?」
「うん」
「後悔しない?」
「しないよ」
間違ったとは思わないよ。
「分かった。」
眉を下げて、笑った龍君は酷く切なくて。
涙が溢れた。
「幸せんなれ」
私の目を見る事なく。
俯いたまま。
私の横を通り抜ける。
「ありがとう!!!!!本当にッありがとう!!!!!」
少し振り返った顔は、少しの笑顔と。
一筋の涙を残して。
マンションの中に消えていった。
その姿にぐっと
心が痛くなる。
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