二人の秘密
その涙を必死に閉じ込め、冷たく夕日に照らされる廊下を歩いた。
"生徒指導室"
そのプレートを見て深呼吸をする。
会ったら………笑おう。
生徒を演じよう。
好きを閉じ込めて、
――――涙を閉じ込めて。
ゆっくり、汗ばんだ手をドアノブに重ねた。
――ガチャ
そんな金属の聞き慣れた音と共に。
明るい夕日が私を照らした。
そして…………
「よう」
そう言った彼は、夕日をバックにあどけない顔で微笑みかけた。
私に。
閉じ込めるつもりだった。
生徒を演じるつもりだった。
――――だけど。
無理だよ。
出来ないよ。
こんなに好きなの。
こんなに愛しいの。
なのに、嘘をつくなんてできっこない。
私はそんな事が出来る程大人じゃないんだ。
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