二人の秘密



「また明日な?莉子」



ほら。
涼ちゃんのたった一言。たった一つの行動で私はこんなに掻き乱される。


「は………い」


真っ赤になる私に「タコみたい」そう言って笑う涼ちゃん。


そんなあどけない笑顔に
私は激しく高鳴る心臓を 押さえた。



「じゃあな」


最後は優しく私に微笑み帰っていってしまった。

そんな涼ちゃんの車を眺めながら、



「ずるいよ………」


私はしゃがみ込んだ。


あの頃の私は
好きがこんなに愛しいものだなんて……知らなかったんだ。


そして、好きがあんなに切なくて苦しいものだなんて
本当に 知らずにいた。
< 34 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop