ColorS
 太陽に温められた石畳は思っていた以上に熱く、熱は薄いドレスの生地を突き抜け私のお尻を焼いた。


さらに、足元を見ると石の隙間にささったパンプスのヒールは付け根からポッキリと折れている。


 やっぱりワンランク安い方にしたのがいけなかったのかな。


 ヒールの折れたパンプスをつまみ上げゆっくり立ち上がろうとする。


「いたっ…」


最悪だ。

怪我はかすり傷程度だが、転んだ時に足を捻ったみたいだ。


 一方では、尻餅をついた咲姫(さき)を無視して、ブーケを受け止めた青いドレスの女性の周りには参列者が集まり、祝福の言葉をあげていた。



 この式の主役である、新郎新婦も笑顔でその女性を祝う。



 この場所で咲姫だけが、誰の目にも映らないかのように、ただそのにあって、静かに新郎の男を見つめていた。


「お客様、大丈夫ですか」

 咲姫に声をかけてきたのは、式場のスタッフだった。黒のスーツが似合うスマートな女性だ。 

「あれ、音色(ねいろ)じゃないわね?…。ごめんなさい。人違いね。」

 スタッフの女性は手早く咲姫の傷の状況をみる。

「大変、怪我してるじゃないですか、すぐ手当てしますね」

 スタッフの女性は奥から持ってきた救急箱で傷を消毒して応急処置をしてくれた。

「これでよし。テーピングしましたけど無理に歩かないように。あとガーゼは定期的に取り替えてくださいね、せっかくの綺麗な肌に傷が残ったら大変ですからね」

 咲姫の手当てが終わるころには、他の参列者は披露宴会場に移動してしまっていた。

「ありがとうございます・・・」

「皆さんもう行ってしまったみたいですね、お友達が心配しているといけないから急ぎましょうか。ご案内しますね」




「大丈夫です。参列者の中には、友達、いませんから」

 咲姫はそう言って、ヒールの折れたパンプスを見つめ続けた。




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