ColorS
 接着剤でパンプスを応急処置してもらった咲姫は、お礼を言って披露宴会場に戻った。

 会場では、新婦の友人が祝福の歌を歌っている。

 二人が長い時間をかけて愛をはぐくんで結ばれる、という結婚式の定番の曲。



でも、咲姫にしてみれば思わず笑ってしまうような内容だ。


 長い時間? 出会ってまだ一月じゃない。


本当の愛?所詮お金でしょう。


 思いだすだけで瞳からは涙がこぼれそうになる。

悲しみをごまかすために咲姫はウェイターに一番高そうなワインを注文する。



すぐ別れるように2万円包んだけど、こんな思いをするくらいなら、2千円でもよかったかもしれない。

 せめてご祝儀の元ぐらいとらなくては納得できない。

 運ばれてきたグラスを一気にあおると、壇上でへらへら笑う元カレを睨み付ける。

ウェイターにはすぐにおかわりを注文することも忘れてはいない。

 睨むだけで人を殺せればいい。そんな危ない考えが頭をよぎる。

 そんなあからさまな咲姫の視線に気づいたあの女は、これ見よがしに男に腕を絡めた。


悔しいけどかなわない。容姿もスタイルも、そして家柄も……


 もともとあの男だって私のことなんて遊びのつもりだったのよね。

それなのに本気になって、こんなところにまで来ちゃって。ホント馬鹿みたい。


 咲姫は楽しそうにじゃれあう二人から目をそらすと、またも運ばれたばかりのワインを一気に煽った。



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