Loved you...
それぞれの想い
「おはようございます」
明るい声と共に
ガラリ、と音を立て
開かれる保健室の扉。
室内で紫煙を吹かしていた男は
ぎくりと肩を揺らした。
「っ先生?!」
「お、はよーございます岡田さん」
真樹の声に慌てて
右手に持っていた
煙草を片付ける杉崎。
そんな杉崎をギッと睨み、
片手で口を押さえながら
窓を開けて換気する真樹。
「仮にも教師が保健室で
何煙草を吹かしてるんですかっ」
「…すみません…」
真樹が言うことに
間違いが一切無いので
何も反抗できない杉崎は
目を泳がせて両手を挙げ
降参のポーズをとる。
まったく…と呟きながら
真樹は窓辺で深呼吸をした。
「それにしても…
先生って煙草吸う人だったんですね」
真樹の質問に、
苦笑気味で答える杉崎。
「まぁね…テンション
上がらないときにちらほらと。
意外だった?」
「めちゃくちゃ意外です!
先生から煙草の臭いとか
全然しませんでしたから」
笑いながら言う真樹に
杉崎はふと思ったことを聞いた。
「…煙草の臭い苦手?」
「大嫌いです」
「…きら、い…」
質問に即答された上に
大嫌いと返ってきて
それが煙草のことだと
分かっていても、
自分に言われたようで
ショックを受ける杉崎。
あからさまに
どんよりした空気を
醸し出された真樹は
慌てて弁解をする。
「別に煙草の臭いがする
彼方先生のこと嫌いなんじゃ
ありませんからねっ?」
嫌いじゃないという言葉と
昨日の一回限りだと
思っていた名前呼びに
面食らう杉崎。
それは本当に嬉しいことで、
自然と口角が上がるのが分かる。
ついでに頬も熱くなる。
慌てて手で口元を隠し
顔を反らして小さく
ありがとうと言った。