Loved you...
杉崎は暖かいお茶を
静かに真樹達の前に置いて
そっと保健室を出ていった。
「……」
「…」
再び訪れる沈黙。
真樹はどうしようと
そわそわし始め、
それで和らぐ美羽の空気。
「実はね、真樹ちゃん」
「は、はい」
「あたし入学してから
ずっと好きな人がいたんだ」
真樹から目を反らしながら、
でも声はいつもの調子で
話し始めた美羽。
「その人にさ、
最近彼女出来たみたいでさ」
「うん…」
「でも、いいって思った。
その人が決めた人なんだし…」
だから気にしないふりをした。
そう、ふりだった。
真樹はただ美羽の話を
黙って聞いた。
「つーか最初はホントに
あんま気にしてなかったんだ。
でも周りの人があたしを
哀れむんだ…だから」
微かに震えたら美羽の肩を
真樹は見逃さなかった。
真樹は先程の美羽のように
そっと美羽の背中を撫でた。
「あたしって可哀想?
ただあたしが告れなかった…
出遅れたあたしは可哀想?」
他人に哀れまれることが
こんなに虚しいとか思わなかった。
「なんか…っ…
こんな惨めな気持ちに
なるんだったらさ…
告っとけばよかった…っ」
「…告白すればいいのに」
黙っていた真樹が
突然いつもより
ハッキリした声で言った。
驚いた美羽は
思わず顔を上げる。
「…彼女いるって知ってて
告白するのは卑怯かな?」
「…卑怯っていうか…」
「どっちにしろ後悔はする。
だったらやらないで後悔するより
やって後悔したらいいよ。」
漫画やドラマで聞く台詞を
まさかおとなしい感じの子に
言われるなんて、きっと
思ってもみなかった美羽。
「だってね、」
唖然としてる美羽の耳に
悲しそうな真樹の声が届く。
「大切に想ってる人が
いついなくなるかなんて
誰にもわからないんだよ?」
だったらちゃんと
伝えられるうちに…と
真樹は笑って言った。
この時、美羽は初めて
少女の笑顔を見た。