だぶるっ!!
お弁当作戦 愛奈side
「あんまり、関翔太君に近づかない方が良いんじゃないかな…?」
真弘が恋奈に忠告をしている時、あたしは自販機の前にいた。
ほっぺの火照りを手で冷ますけど、あまり効果はなかった。
何年ぶりだろうか。
真弘に『あ~ん』なんかされたの。
最後が小学生だったことは確かだ。
その時ちょうど自分の気持ちに気づき、真弘に対する淡く儚い想いを募らせる日々が始まった。
「冷静に、冷静に…」
自分に言い聞かせ、深呼吸をした。
お昼の途中で抜け出してきて、恋奈と真弘には不愉快な思いをさせたかもしれない。
財布から小銭を出し、自販機に入れようとした時だ。
ドンッ。
勢い良く人がぶつかり、その振動で小銭が音をあたしの指から零れ落ちた。
「あっ…」
「あ、わりっ!!よいしょ…」
ぶつかってきた男子生徒は、足元に散らばった小銭を拾い集め、あたしの手の中に戻した。
「ありがとう…。って、あぁ~!!」
大声をあげると、相手はビクッと身じろぎをした。
「な、なんだ…?」