【完】ポケット-幼なじみ-
「―――礼。」
授業が始まったのにも関わらず、歩夢がいなかった。
「水瀬くん、ここ
わからないんだけど…。」
「…あぁ。」
隣の真井に何を言われても、上の空だった。
「ね、歩夢
どこいるか…知ってる?」
さっきから気になっていたことを口にした。
「…知らないよ?」
頬杖をつきながらいう彼女のことなんて正直、信じられない。
………………ガタタン。
音を立てて椅子を引けば視線が集まる。
「先生。具合が悪いので
保健室…行ってきます。」
…………具合悪いなんて、嘘だ。
「おー。そーかー。
お大事になー。」
「すみません。
ありがとうございます。」
真井の視線を背中に感じながらそっと教室を出た。