薔薇色の人生
人間は極度の混乱に落ち入ると抵抗する術も失くなるらしいと初めて知った。『よし!決まりだ。特別に付き合ってやるから変装に必要な物を買いにいくぞ』と、僕を引きずる様にして3人は車で街に向かった。車の中でいくらか冷静さを取り戻した僕は『優子さん、本契約まであと6日しかないんですよ。今から頑張っても間に合う訳がないですよ。せっかくの作戦ですが、予定変更といきませんか?』優子さんは『大丈夫だよ。気合い入れれば。ん?まさかお前やりたくないって言うんじゃねぇだろうな…』先ほどまでのご機嫌顔が曇りはじめ、遠くで響く雷鳴の様な迫力を醸しだしている。渉兄さんにアイコンタクトで助けを求めると片目を瞑って合図してくれた。何か考えてくれているに違いないと思うと少しだけ心に余裕がうまれた。
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