薔薇色の人生
男は吹き出してしまい、優子にいれたコーヒーを手渡して『本当に面白い方ですね。この件が解決したら食事をご一緒して頂きたいな』男は真顔で優子を見つめ、優子は男の包容的な瞳に胸の高鳴りを感じていた。その時インターホンが鳴り出前が届いた様だ。男は『今、手が離せないんでね。1階のドアを解放するから玄関の前に置いてくれ』と伝えてスイッチを押して解錠した。しばらくして吸っていたタバコを灰皿に押し消してから玄関に向かって歩き出した。男が扉を開けた瞬間、優子はバルコニーの窓を開けて手摺に手をかけ半身を乗り出した。男が気づいて『おい、危ないからやめろ!死にたいのか!』と叫びながらこちらに向かって走ってくる。優子は『カツ丼はあんたにあげるわ。バイバ~イ』と手を振りながら手摺越しに隣家へと飛び移り、あとは猿の様な身軽さで雨樋を伝って降りてしまった。その様子を男は唖然と見守るしかなく、近所の住民も騒ぎながら見ていた。なんて破天荒な娘なんだ…男は彼女に対し守ってやりたくなる不思議な魅力を感じていた。