【短編】君と赤に染まる僕
「沢山の人間に裏切られたからよ」
ヨミが、たんたんと言う。
そんな理由か。
「僕も、人が大嫌いだったんだ、少し前までは。理由は、裏切られ、いじめられ、親からは虐待を受け、屋敷の人間には、"化け物"と、呼ばれ続けてきた。でも、一番は、"物"として、使われたことかな」
「えっ!?」
ヨミが驚きの声をあげる。
クロムは心配そうな顔で僕を見ていて、レイスはしずかにヨミの隣にたっている。
「以外、だった?」
「だって、コウじゃ、なかったみたいに、今……」
ヨミがビクビク震えながら言う。
「どっちが、本当の僕なんだろうね? 自分でもわからないや」
「……そういえば、人がどうして嫌いじゃなくなったの?」
「嫌いなやつを、苦しめてやったからかな?」
「……苦しめ、る?」
「あぁ。叫び声を聞く度に疼く、もう一人の、つくられた僕が」
久しぶりだ。
こんな風に、感情を表に出すのは。
でも、やっぱりこっちの方がいいな。
強くなった気分だ。
「コウは、何者?」
ヨミが小さな声で聞いてくる。
「僕は、ヴァンパイアハーフだよ。ヨミは?」
「私は、純血のヴァンパイアよ」
ヨミが、美しい声で、そう答えた。