君待駅
そう言われた瞬間に、自分が震えていたのだということに気付く。
この震えは恐怖からきたものらしい。
おまけに涙で視界が歪んでいる。
止めたいのに、全然止まらない。


「…っ…っく…うっ…」

「いーよ。泣いて。」


そう言いながらぽんぽんと優しく頭を撫でてくれる。
その声もその手も不思議なくらい安心できて、いつの間にか体の震えも涙も収まっていた。


「ごめん、待たせたね。」

「いえ。あ、あの、彼女…痴漢に遭ったこうなんつーかメンタル的ショックが大きいみたいで…
なので事情聴取?的なもんは俺だけで勘弁してもらえませんか?」

「まぁ…彼女がそれを望むなら仕方ないが…。」

「つーわけで学校行け。あとは俺に任せとけばいいから。」

「えっと…あの…。」

「ほら、電車来た。乗れ乗れ。」


そう言って私を電車に押し込む彼。


「よし、今度は座れるな。席空いてるし。
…気を付けろよ。」


そう言ってまた、私の頭を軽く撫でる。
そしてその手が離れてから、ドアがゆっくりと閉まった。


…どうしよう。声が出ない。


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