君待駅
「え…?」


振り返った先には…さっきの男の子が立っていた。
ちゃんと見ると、私よりもずっと身長が高い。
そしてその右手は、私の後ろに立っていたと思われるおじさんの右手をぎりっと掴んでいる。



「朝から見苦しいことすんなよな。こっちが気分悪ぃよ。」

「おまっ…何を言って…。」

「満員電車だからって何してもバレねぇなんて思ったら大間違いだからな。」

「だから何を…。」


彼の声のトーンが一気に下がる。
そして面倒臭そうに口を開いた。


「…はぁ?何?今更痴漢なんてやってねぇとか言い出すなよ?
お前、痴漢の現行犯だから。
実際そこの子、触られたっしょ?」


パチッと目が合う。
私はこくんと頷いた。
その瞬間、ふいっと顔を背けられた。



「ほらな。俺も見てたし。この子もこう言ってる。
もちろん俺らが示し合わせて演技してるわけじゃねぇし。
つーわけで降りるぞ。」


タイミング良く開いたドア。
そのままおじさんをぐいぐい引っ張っていく彼。



「あ、一応君も来て。」

「あ、はいっ!!」


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