君待駅
「駅員さーん。こいつ、痴漢の現行犯ですー。」

「なにっ!?痴漢!?」

「そうです。この子のこと触ってて、ギリギリで阻止しました。
とりあえず、引き渡します。」

「お、おお…。」


そう言って引き渡されるおじさん。


「あ、君たちは少しここにいてくれ。事情とか聞かなくちゃならないから。」

「はーい。」


軽快な彼の返事が空気に溶けてしまった後、駅のホームにぽつんと残された私と彼。
気まずくはないけれど、特に何かを話すわけでもなく、ただ沈黙だけがここにあった。


「寒い?」

「…え?」


不意に話しかけられて、私はぱっと顔を上げた。


「震えてる。あー…俺、ジャージしか持ってねぇけどいい?」

「へ?」


私の返事を待たずにカバンからジャージの上を取り出した彼は、それを私の肩にそっとかけてくれた。


「つーか寒ぃわけじゃねぇよな…。
ただ単純に…怖かったんだよな?違う?」



真っすぐに、どこか心配そうな表情を浮かべて彼はそう言った。


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