一瞬の永遠を、きみと
少しずつ空が明るくなっていく。
まだ涼しい空気の中を、わたしたちは進んでいく。
朗は落ちないようにわたしのシャツをしっかり掴んで、わたしはその温もりを感じたまま、ハンドルを握る。
まだ、世界はとても静かで、この世界にわたしたちふたりきりになってしまったような、そんな気になる。
「涼しいなあ」
後ろでのんきにそんなことを言う同乗者に、きっと清々しい気持ちで返事を出来るのは今だけだろう。
「そうだね」
爽やかな朝の風は、たぶんあと数時間もしないうちに、生温くて気持ち悪い風に変わる。
真夏の空気。
うだるような蒸し暑さは、何度経験しても慣れることはない。
「なあ、夏海」
「なに」
「海は綺麗かなあ」
「うん、綺麗だよ。今から行くところは、南の島の青い海とは違うけど、たぶん、綺麗」
「そうか」
朗が、小さく息を吸うのがわかった。
きっと笑っているんだと思うけど、そこまでは、顔が見えないからわからない。
わたしも息を吸って、吐き出した。