一瞬の永遠を、きみと
朗の父親は、静かな動作で二度瞬きをしたあと、ゆるりと微笑んだ。
「ええ。あなたに会いに来たのは、その気持ちを伝えるためだったからね」
そしてもう一度、真っ直ぐわたしに向き直る。
表情はとても柔らかで、だからこそわたしは、何も言えなくて。
「……だけど、あの子に普通の生活をさせてあげたいって思っていたのは、私も同じなんだよ」
微笑んでいるのに、今にも泣いてしまいそうな顔だった。
自分で、そんな表情をしていることに気が付いているのか。
何よりも切実な思いを胸に秘めて、だけどそれは、隠しきるにはもう大きすぎて。
「さようなら、夏海さん」
そしてひとつ、深く頭を下げて、朗の父親はドアの向こうへと消えていった。
わたしは暫くの間、閉じられた扉を見つめていた。
───なんだろう。
言いようのない想いが、ぐるぐると体の中で渦巻いている。