一瞬の永遠を、きみと
静かに目を閉じていた。
眠っていたわけではないけれど、暗闇の方が、気が楽だった。
だけど、しばらくしてから。
わたしの呼吸と雨の音しか聞こえなかった空間に廊下を進んでくる足音が聞こえて、ゆっくりと瞼を開けた。
「あれ? 夏海ちゃん?」
聞き慣れてきた声が聞こえる。
あの人まだ働いてたんだ、そんなことを思いながら体を起こし、背もたれ越しに声が聞こえた方を向いた。
「あ、いたいた」
顔を上げると、思った通り後藤さんが歩いてくるのが見えていて。
だけど、わたしの視線は、すぐに彼を通り抜けて。
「……」
わたしに笑顔を向ける後藤さんの、数歩後ろ。
ゆっくりと、こちらに向かってくるその人から、目を離すことができなかった。
「……お父さん」