一瞬の永遠を、きみと
「ほら、行くぞ」
朗がわたしの手を引く。
今度は立ち止まることなく、わたしはその冷たい手に引かれるまま、足を進めた。
少し癖のある黒髪が、目線の少し上で揺れている。
死のうとしていたはずなのに、わたしは一体何をしているんだろう。
頭の隅でそう思いながらも、わたしの足は止まらなかった。
何で止まらないのか、何でこいつの背中を追っているのか。
わからないようで、本当は、わかっていたけれど。
わからないふりを、自分にしていた。
「ねえ、どこに行くの」
目の前のベージュのカーディガンに向けて声を掛けると、その答えは、間を置かずに返ってきた。
「お前の名前と同じところだ」
「え?」
わたしの、名前、ということはつまり、もしかして……。
朗が、楽しそうに笑いながら、振り返る。
「海に、行くんだ」