一瞬の永遠を、きみと
は、と漏れる声を抑えることができなかった。
仕方ない。
だってまさか、海に行くなんて言い出しておいて、お金を持っていないなんて。
「ほんとにないの? ちょっとくらいあるでしょ」
「だからないんだって」
「うそでしょ? 1円も?」
問い質せば、朗は「ああ」と短く答えて、それから少し考えるように黙ったあと、前を向いたまま呟いた。
「なあ、金がなきゃ海には行けないのかな」
進む術がないのに、それでも足を止めない朗に、わたしは呆れることすら忘れていた。
今の状況を、こいつはわかっているんだろうか。
もちろんわたしはわかりたくもないけれど。
「何言ってんの、当たり前でしょ! お金が無かったら、バスも電車もタクシーも乗れないんだよ」
ここから海に行くには、なんでもいいから交通機関を使う必要がある。
だけどそれにはお金が無ければ乗れなくて。
当たり前、そんなもの常識。
小学生どころか、もっと小さな子どもだって知ってることだ。