一瞬の永遠を、きみと
───夏休みの校舎は、耳が痛くなるほどに静かだった。
遠くから響く野球部の掛け声と、吹奏楽部の軽やかなメロディーが耳に届く以外、自分の心臓の音と蝉の声しか聞こえない。
いつもは止まない喧騒に包まれているせいか、なんだかその静けさが、妙に不自然に感じた。
窓を閉め切っているせいで熱気が籠もった廊下には、誰の影も落ちていない。
ただ、わたしの汚れたシューズだけが、ワックスの塗られた心もち綺麗な廊下を踏みつけていた。
ペタリ、ペタリという音が、長い廊下の端までゆっくりと響いていく。
屋上へ続く扉の鍵が壊れていることは知っていた。
わたしだけじゃない、生徒のほとんどが知っていることだ。
普段は立ち入り禁止の屋上。
わたしは躊躇うこともなく、その場所への扉を開けた。