一瞬の永遠を、きみと
だけど、自転車に乗ろうとしたわたしたちの隣で、おばあさんがのっそりと立ち上がって。
ぽんと手を叩きながら、わたしたちに向かって、にこりと笑うものだから。
「やっぱりさっきの奢りってやつ、なしね」
上げかけた足が止まる。
「え」と短く声が出る。
奢りはなし。
でもわたしたちはもう、ジュースを飲んでしまっているわけで。
つまりは金を払えってことだと思うんだけど。
何度も言うけど、もう、お金はない。
「え、でも、あの……」
「金ならもうないよ」
焦って言葉が出ないわたしの代わりに、すでに荷台に座っていた朗が口を開いた。
お前は最初から持ってないだろ、本当ならそう言いたいところだけど、そのときのわたしはそんな余裕もなく、ただ朗の言葉にうんうんと頷いていた。