一瞬の永遠を、きみと
だけど朗はまったくそんな雰囲気なんて見せずに、相変わらず涼しげな表情を浮かべている。
「どうした夏海」
のん気にそんなことを言って、またおまんじゅうに手を伸ばそうとするから、なんだか無性に腹が立つ。
「うっさいあほ! なんでもない!」
「え、なんだ急に、そんなに怒って……」
意味がわからないと言った顔で、助けを求めるように振り向いた朗に、「乙女心は複雑なものなのよー」とおばあさんはころころ笑って。
朗は不思議そうな表情で、わたしはひとりで勝手に機嫌の悪い。
全員がばらばらな表情で、ばらばらな気分。
なんだかとてもおかしな空間のような気がしたけれど、そう言えば全員が出会ったばかりであるんだから、気持ちが揃う方がおかしい気がして。
そして出会ったばかりのわたしたちが、こうして今同じ空間に居ることは、やっぱりなんだかおかしいことのように思えた。
「さ、そろそろ寝ようかな」
おばあさんがのっそりと立ち上がるから、つられて時計を見ると、針は9時過ぎを指していた。