てのひら
あの時、電車のアナウンスが
聞こえなくて車内で何が
起こっているのかは
わからなかった。
電車が止まっていることは
車内の人達の様子でわかっていた。
まあ、そのうち動き出すだろうと
思っていて窓を眺めていた俺に
詩史が近づいてきて
携帯の画面を見せてくれたんだ。
俺が納得すると詩史は
ふいと電車のシートに座った。
詩史は俺と視線を合わすこともなく
俺が先に電車から降りた。
帰り道、
何か胸のどっかで
引っかかっていた。