したたか舌打ち、ジメジメいじめ
2番目グループに在籍しているけれど、“馴染む努力”はしなかった。
ご主人は様子がおかしいよ。
だって《嫌な女と仲良くしたくない》なんて、八方美人にあるまじき発想さえ沸くんだから、
今の状況は変だ。
俺はご主人に話ができないから、ただその負の感情をただただ感じるだけだった。
【集団から離れた一匹狼】の美人なクラスメート。
ある日、ご主人はたまたまバイトの帰りに見たんだ。
駅で歌う彼女を。
夜中の駅、ギター。
そう、この世代は弾き語りが流行るらしく、ちょっと街中が好きな連中はたいてい地べたに座って歌う。
――澄んだ声で歌っている。
本来ここは『感動した』、『私も頑張らなきゃ』とかなるんだろう。
心を入れ換えて、正義感に満ち溢れる少女となるんだろう。
……とはいえ、ご主人は清らかな心を持ってない“どうしようもない”女だから、
感動したとかはなく、《肺活量あるなあ、すげー》とか思ってんだ。
(……やっぱりひでぇ女だよな、なんか魅力がないよ。普通は『前向きにならなきゃ』とかの場面だろうに)
――ただ、不思議と大人っぽい彼女に惹かれた。
不思議。傘を忘れた日に雨が降って、折り畳み傘を持っている日に太陽サンサンなくらい不思議。
悲しいけれど、感動とかしちゃえない主人公のご主人だから、イジメに立ち向かう素晴らしいヒーローになれる訳がない。