したたか舌打ち、ジメジメいじめ
自分の手は汚さない。
女子高生たるもの、流行り雑誌の煽り文句通り、いつだって“愛され上手”なのだから。
自分が嫌いな子を直接いたぶったりなんかしない。
“このアタシ”なんかがイジメなんかしたら、みんなに嫌われるから。
だから“そういう”イジメなんかしない。
かばんや携帯、持ち物にいたずら?そんなの壊したりしてお金を請求されたくないからしない。
机や靴箱に落書き?そんな筆跡でバレ易いことなんかしない。
お金を奪う?そんな脅迫まがいな犯罪なんてしない。
性的暴行?そんなの男が雇われたと口を割らないとは限らないからしない。
暴力なんてもってのほか。怪我なんかして大事になったら困るのでしない。
そういう狂気な女のイジメも存在するには存在するらしい。
しかし、遭遇率で言うと低いだろう。
だから、そんなクレイジーな場面ばかりをコレがイジメだ!とTVで流されても、
経験してない人からすれば、それは視聴率稼ぎの“誇張”なんだと、笑いのネタとして流してしまう。
そう、いつまでも世間で“イジメらしいイジメ”ばかりを取り上げるならば、
“おしとやかなイジメ”をしている自分に、一般人はなかなか気付けない。
“透明なイジメに関わっている自分に気付けない”。だからイジメはあるのかもしれない。
……微笑みの女子はそういうイジメなんかしない。自分が可愛いからそういうイジメはしない。
“みんな”に嫌われたくないからしない。もちろん“ターゲットにも嫌われたくはない”のだ。
“みんな”から慕われている人でありたいのだ。
だから自殺させる気なんてないし、そもそも嫌いでもないし、ストレスのはけ口にする気なんてないし、
そう、ただ自分があの子より“優位”でありたいから―――その確認作業でイジメるだけ。
きっかけなんて、些細なこと。“なんとなく”だ。
普通の女子高生は、遠隔操作でイジメる。
それが透明なイジメ。
何かしらクリーンを叫ばれる世の中にぴったりなイジメ方だ。なんせ不透明ではないのだから。