したたか舌打ち、ｼﾞﾒｼﾞﾒいじめ

多分、ご主人たち二人は【クラスの負の笑い】を、自分たちで【陽の笑い】に変えようとした。

意地悪な笑いではなく、新しい笑いを教室に提供したかったんだと思う。


ケラケラ笑って、黒板に自分たちの似顔絵を描いて笑ってみせる。
デフォルメして、普段からパンチがきいているのに、より不細工に自分を描いた。


《ばかみたい》とご主人は思いながら、Ｆちゃんの似顔絵の横に可愛くない自分の似顔絵を描く。

相方も一緒に『うちらこのクラスの不細工ツートップ』と、

笑いながらチョークを走らせた。




なあ、こんなことを。
こんな馬鹿みたいなことを。

『同じことを出来るのか？』って言われたら――俺は出来ない。

こんなことをする発想がまずない。


ご主人は、多分たまにイイヤツだ。すげぇ性格悪いけど。

捻くれているくせに。
本当に不本意だけど、イイヤツ、だ。今回は認めてやろう。


相方と二人笑って、教卓でヘンガオして笑ってみせる。

【教室は少しマシな笑い】になる。

そして、自然に落書きを消す、Ｆちゃんのも一緒に消してしまう。


おかしいな、果てしなく不細工なご主人がめちゃくちゃ可愛く見える気がする。

何か変な薬でも飲まされたのかな……だって浴衣着ても三割増しにならないご主人が、今三割増しに見えるんだ。

あの鳥肌フェイスがラブリーフェイスに思えるなんてミラクルだ。異常だ。