もう一つの甲子園

「へぇ～二人共彼女いないの？」とミサが言うと「いるそうに見えるんだけどな～」と美奈も不自然そうに頭を傾けた。

二人には厳しい現実を説明し納得してもらった。

タカと雅人は最後まで勉強など手付かずのまま、しているふりだけでもこの場所にいるだけで楽しいと感じていた。

しかし、楽しい時間はあっと言う間に過ぎるもので、日が暮れる前に彼女達は帰って行った。

数時間後、洋二の家から出てヨンフォアにまたがりエンジンをかけようとした時。

「タカ、美奈は止めとけよ」

「わかってるよ、洋二は友達だよ。また明日な！」

キュルルッ、ボォーーー

途中から雅人と別れ、長い直線に出た時タカはスロットルをいつもより多く開けた。

ヨンフォアの咆哮がボォーーーからコォーーーと変わり、持って行き場の無い気持ちをかき消すように街中に響き渡った。