もう一つの甲子園
深夜1時過ぎ

タカは眠れずにベッドの上でボーッとしていた。

パランパラン窓の外でサンパチの音がした。

雅人?

タカは飛び起きて窓を開けて下を見た。

「雅人!何やってんの?」

「タカ、上がっていいか?」

「いいけど、眠れねぇからビール買ってきてよ」

「金は?」

「ねえ」

「この前も580円貸してんだからな!」

「じゃあ、けーれ」

「わあーったよ!買ってくるよ」

「ついでにセブンスターもなっ!」

「コロス!」

そうして二人の宴会が始まった。

プシュッ!かんぱあ~いっ!

「カアーッ!おごりのビールはウメェェ~」

「首しめてやるから先に寝ろ!」

「そう怒るなよ、冗談冗談、11時頃おふくろから電話あったぞ」

「そうか」

「そうかじゃねぇよ、親に心配かけんじゃね~よ」

「タカには言われたくね~セリフだな」

「今まで何してたんだよ?」

雅人は峠での出来事を話した。

「雅人そりゃ無理よ、今日買ったばかりのサンパチでよ~」

「そりゃ、まだ慣れてないからコーナーは遅いのはわかるが直線だぜっ!」

「お前のサンパチ調子悪いんだよ、煙出るしぃ」

「煙は関係ねぇよ」

「だったら、明日の晩二人で行ってみようか?」

「ああ、いいぜ。一度見たらタカもぶっ飛ぶよ」

雅人は興奮がさめやらぬ手でタバコに火を付けた。

「あああっ、俺のセブンスター!」

「俺が買ったの、ビール空よ」

「おやじのブランデー持って来るから待ってろ」

「いいね~、氷と水もな!」「雅人お前も来い!」


この日二人は朝5時まで呑んだ。

そしてテスト期間中の深夜、峠に通ったが432を見る事はなかった。





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