もう一つの甲子園

亡霊

大嫌いなテストも終わり、夏休みの前日。

学校帰りのタカと雅人の姿がタコおやじの店にあった。

「おっさんさ~、フェアレディの432って車知ってる?」

「ああ、ニッサンの名車だな。タカよく知ってるな?」

「その車って早いの?」

「はえ~し、心臓部のエンジンが奏でる音が最高よ!それがどうした。」

それがさ~と、雅人がその夜の話をすると急にタコおやじの顔色が変わった。

「サンパチの加速を上回る赤い432?!俺の知ってる限り、そんな怪物がこの日本に存在するとしたら一台しかいねぇ!」

「知ってるのか?おっさん」タカと雅人はハモった。

「車の性能だけじゃねぇ。そんな怪物を手足のように扱える人間も一人しかいねぇ」

「誰なんだ?おっさん」タカと雅人は再びハモった。

「当時、日本人初のF1レーサーかとまで噂された、日本レース界のプリンス高木洋一郎!」

「あっ!名前だけは知ってる!雅人はそんなすげーのと勝負したのか?おっさん!」

「いや、そんなはずはねー。そんな事はありえねー。」

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