もう一つの甲子園
それは俺の前に天使が舞い降りた瞬間だと思った。

神様ありがとう!心の中で神様に感謝しようとした。

するとその時、かの女の後ろからタカっ、タカとどこかで聞いた声がした。

よく見ると、中学時代に一緒に野球をやってた島田洋二だった。

「よぉ洋二か!ひさしぶりだな~これは?」とスイングの振りをした。

「まだ、続けてるよ。今度県大会予選に選手で出るよ。」

「そりゃすげ~な、所で今日は練習しないで何してんの?」と彼女に視線を向けながら聞くと。

「俺も部活の合間をみて原付免許とったから一応どんなバイクがあるか見に来たんだよ」

それで?ともう一度彼女に視線を向けると。

「あっ、紹介するよ。俺の彼女、美奈っていうんだ」

彼女?軽いめまいの中で天使が飛び去って行くのを隆は見た。

かの女は、美奈です。ヨロシクねっ!と可愛く会釈した。

お、俺、た、隆史!皆はタカって呼んでる。

そして15分くらいの会話の中で「美奈」いう名前だけがタカの頭の中を天使が輪になってぐるぐる駆け巡り続けた。

「じゃあ、またな。野球頑張れよ!俺は暇な時ここにいるからいつでも遊びに来いよ」と二人を見送りながら美奈ちゃんだけに手を振った子供のタカであった。

日が暮れて、帰りの足が無い俺を沢田さんが家まで送ってくれる事になった。

途中、湾岸線にでると潮風の香りが心地よかった、タカはいつか海岸線を彼女を乗せて走る事を夢見ていた。

集合管の咆哮を残して初夏の海岸線をZ2は走り去った。









< 6 / 43 >

この作品をシェア

pagetop