聖夜の恋人
毛先のふわっとした髪を満足気に弄りながらデパートへ向かった。
その足取りは自分でも驚くほど軽やかで気持ちがよかった。
今日は天気がよかったせいかデパートは人がとても多かった。
緑と赤を基調としたクリスマス一色のデパート内は仲良く腕を組んでいるカップルや子供を連れてきている若い夫婦、孫のクリスマスプレゼントを買いに来たと思われる老夫婦などいろんな人がみんな笑顔で売り場を覗いていた。
アクセサリー売り場にいる学生カップルがぎこちなく手を繋いで同じマフラーをしているのを見て自然と笑みがこぼれた。二人とも幸せそうで可愛かった。
ここにいるすべての人が一人一人全く違う、聖なる夜を幸せな一日にしようと自分や大切な誰かへの贈り物を選んでいる。
そんな姿を見ていると口元が緩み、優しい気持ちになった。

「いらっしゃいませ」店員がニコっと微笑み、ワンピースコーナーにいる私に今売れてる品々を紹介した。
「今注目のワンピースはこれです」
店員は自信満々にワンピースを広げて見せた。
「あっそれ見ました」純子が一番可愛いと思っていたワンピースだった。
真っ白の膝より少し上のワンピースで裾に雪の結晶や星などキラキラした刺繍が入っていて袖はふんわりとしたパフスリーブでいかにも女の子らしいデザインだった。
「さすがお客様!こちらの商品本当に売れていてもう出てるだけなんですよー」
店員が甘い声を出して色違いを出してきた。
「赤と白なんですけど、お客様でしたら白がお似合いかと思います。色白ですしヘアカラーがピンク系なので白のほうが絶対映えますよ!」
「白のワンピースなんて着たことないんですよ」
「本当ですか!もったいない、ぜひご試着だけでもしていってください」そういって強制的に試着室に私とワンピースを招いた。
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