聖夜の恋人
この人は店長なのかもしれないと勘ぐった。
試着室で改めて着てみると可愛すぎると思っていたワンピースだったが裾の雪色と白の刺繍、胸元のジュエリーがワンピースを上品に魅せていた。
確かに髪の色ともばっちり合っている。
「お客様いかがですかー」
「はい」
カーテンの外に出ると店員は待ち構えていたように「わぁ!やっぱりすごいお似合いじゃないですかー可愛いですよ」といった。
「そうですねー意外に可愛すぎないしいいかもしれない」
「そうなんですよ!なのでこれにファーなど付けて頂いたらパードレスとしてもお使い頂けます」

一枚あればいろいろ使えるし買っちゃおうかな。
鏡に映る自分の隣に中川さんを置いてみた。
「よし、買います!」
「ありがとうございます」
力が抜けたのか安心したのかわからないが店員は落ち着いた面持ちで頭を下げた。

「お会計が三万六千円になります」
「えっ!は、はい」思わず声を出してしまった。コートと同じくらいの値段のワンピースだったなんて。急に落ち着いた店員の態度が今になって分かった気がした。
でも中川さんを隣に置いたらピッタリだったんだから買って損なしのはず。
ストラップシューズにしようかブーツにしようか考えながら店を出た。
編みタイツもいいかもね。
デパートを出るとすっかりあたりは暗くなっていた。
街の木々がキラキラと輝き始め、街のざわめきが気持ちを高ぶらせた。
どこかでご飯でも食べて帰ろうと思っていたのでイルミネーションを見ながら考えた。
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